青森紀行その1 恐山と大間のマグロ丼
今年のお盆休みは帰省のみです。例年は北アルプスまで遠征に出かけ、『縦走登山がいつものパターン』でしたが、今年は亡くなった祖母の初盆であり、涼しい北東北と言えど、今年の酷暑は母の体調も心配なので、おとなしく帰省することにしました。
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太宰の『津軽』を気取る
私は青森県生まれですが、正直県内をよく知りません。高校を卒業して大学進学とともに実家を出て、それからはたまの帰省のみで訪れるだけなので、子どもの頃遊んだ実家周辺以外は知識がありません。青森に旅行に行ってきたという会社の同僚から、初めて聞く名物や観光スポットがあるくらいです。先日も青森に旅行予定の同僚から、田舎館村の『田んぼアート』について聞かれましたが、一度も見たことがなく、返答に困ったのでした。
故郷についてよそ者の方が知っているのも癪です。実家に帰省しても、お墓まいり以外はいつも寝て過ごすことが多いので、せっかくだから、よく聞かれがちなスポットをあちこち見てくることにしました。
下北半島
下北半島は津軽で生まれた私には『旅行』などで出かけない限りは縁がありません。もっとも、家族旅行などなかった私の子ども時代には、全くの未知の領域でした。何年も前に下北を一周してきたことはありますが、ナビももたず、計画も立てずに出かけ、何の成果もなく散々な結果だったので、今回はリベンジとなります。
目的は『恐山』と『大間のマグロ』、そして尻屋崎の『寒立馬』です。
下北半島は『遠い』
青森県は大きく分けて津軽と南部に分かれますが、下北半島は南部地域の一番上、津軽地方とは陸奥湾を挟み、反対側に位置します。つまり、位置的には最も離れた位置となります。
津軽から向かう場合、ナビで検索してみると、移動時間に6時間前後!と出ました(ちなみにGoogleMapで検索すると2.5時間くらいですが、これは明らかに間違った時間です)。私が例年縦走登山の遠征で宮城から北アルプス(上高地への玄関口、長野県松本市の沢渡)まで向かうのに6時間弱ですので、 同一県内の移動にもかかわらず、時間にして同等程度ということになります。しかも、長野まではほぼ高速道路の移動のみで、さほど疲労もないのですが、今回は大半の移動が下道ですので、疲労感は相当でしょう。
以前聞いた話です。青森市内で別れた二人組Aさん・Bさんが、Aさんは仙台に帰り、Bさんは下北へ帰りました。Aさんが仙台へ到着したとき、Bさんはまだ移動中だったのでした…。
正直6時間という時間を見てひるみましたが、覚悟を決めて出発しました。
下北半島へ入る
津軽を出たのが8:30、10時前には下北に入りましたが、ここからが長いのです。
小学校が『閉校』していました。私の母校も閉校を経験しているので、なんとなく写真を撮りました。ちなみに、もう少し先でもう一校同時に『閉校』していました。いかに子供がいないか思い知らされ、国の行先も不安になってしまいます。移民を入れても、どうせ都市部にしか定着しないでしょうし…
途中海沿いの『横浜町』を通り、むつ市へ向かいます。横浜といっても、海沿いに菜の花が咲く、のどかで似ても似つかぬ景色です。
恐山
恐山周辺に到着したのは12時すぎでした。ここまで津軽から3.5時間以上の移動ですが、下北だけですでに2時間以上かかりました。
恐山情報
恐山はよく知られた仏教の霊場で、高野山・比叡山と並び、日本三大霊場に数えられています。寺の境内には温泉が湧き、車で向かうと車内が硫黄の匂いが充満して驚くほどです。
地蔵信仰を由来とし、水子供養や死後恐山へ行くという下北の伝説など、死者への供養の場です。関連して死者の言葉を語るイタコで有名ですが、特定の祭りの時期しかおらず、私は見たことがありません。
入山料
500円です。入山料のみで入浴もできます。温泉は脱衣所と風呂がくっついた掘っ立て小屋でしかないので、貸しタオルなどのサービスは一切なく、すべて持参する必要があります。宿坊に泊まると、もっと立派なお風呂とお食事が用意されます。一泊二食で一万二千円とのこと。
上の画像の、参道脇の茶色小屋が無料の温泉です。
開山時期
開山期間は5月1日から10月末日まで。それ以外は閉山で入ることができません。また、開山期間中も6時から18時までの開門時間となっています。
恐山境内
恐山の境内は順路に従って歩くと、火山性ガスが吹き出る『地獄』と、宇曽利湖の美しい浜辺の『極楽』を巡ることができます。
地獄の部
硫黄の匂いが立ち込め、賽の河原のごとく、一つ積んでは母のため…の例の石積みがあり、所々に風車が刺してあります。この風車は幼子の霊を慰めるためだそうですが、それがたくさんあるとなると、色とりどりの風車も、悲しげな景色に見えてきます。
恐山は金山でもあるようですが、流れ込む川をみるとついつい金を探してしまいます。ちなみに国立公園ですし、霊場でもあるので採掘はできないとか…。
地獄めぐりをしている時に金に気をとられるとは、私もダメ人間ですね。
極楽の部:宇曽利湖
岩がごつごつした地獄を抜けると、宇曽利湖の白い砂浜がまさに極楽のような景色で目に飛び込んできます。
晴れた夏の日だと、白い砂浜がリゾート地のようで、素晴らしい景色です。とはいえ、宇曽利湖は温泉成分が流れ込んだ酸性の水質で、泳ぐことはできません。魚もウグイしかいないそうです。
皆宇曽利湖に着くと、『うわー、綺麗!』と歓声をあげていました。ここを見るだけでも、来た甲斐があるというものです。以前私が来た時には、時刻はすでに夕方近く、天気も悪かったので何の印象にも残っていなかったのですが、晴れて日が高い時間帯だと本当に素晴らしい景色です。夏場なら、女性でしたら日傘があったほうがいいかもしれません。目が弱い方はサングラスも…。
ちなみにやたらとガタイがいいお兄さん(短髪、ラガーシャツ、短パンのラグビー選手風?)の二人組がポーズにこだわって写真を取り合っていたのですが、そこだけ異彩を放ってる感じでした。
大間へ
昼過ぎからマグロを食べに大間へ。恐山から大間まではナビの表示で2時間弱でした。実質、13時頃に恐山を出て、大間崎着は14時20分頃なので、1時間30分くらいでしょうか。なんとか、ランチ相当の時間にたどり着きました。下北という1地域内でもこれだけ時間がかかるのでは大変です。
マグロ丼
以前来た時は、大間に来てもマグロを食べるような場所を知らなかったのですが、今や便利になって、ネットで詳しく解説されています。
本州最北端の大間崎まで来ると、その周辺に食べログにも情報が出ている飲食店があり、特に迷うことなくマグロにありつけます。注意が必要なのは、マグロを生(冷凍ではなく新鮮な生の状態)で味わえるのはマグロ漁が行われる7月から1月までで、特に水揚げが多いのが8月から11月までということ。それ以外の時期だと行っても冷凍のみだったりするとのことです。
今回私が利用したのは、『民宿 海峡荘』です。理由は食べログの評価が良かったのと、場所が一番わかりやすかったということ。ナビでも検索が容易でした。店の裏手に大間崎観光用の大きな公共駐車場があり、駐車料金は無料です。駐車場がいっぱいでもすぐに空きますし、なんとかなると思います。
メニューは色々あるのですが、私が食べたいのはマグロだけだったので、『マグロだけ丼 2800円』を選択しました。マグロがドカンと載って、味噌汁と香の物がちょっと付きます。
店は混んでいて、整理券制担っていましたが、比較的回転が速く、相席ではありましたがすぐに順番が回ってきました。店の人に食べたいものを伝えて整理券を受け取り、順番が来たら呼ばれて店内に入るシステムでした。大間崎についたら、真っ先に店に向かって、順番を待っている間に大間崎で記念撮影をするのが良いと思います。大間崎の記念碑などは店の目の前なので、徒歩1秒ですし、さして見るものも無い(笑)ので…。岬よりマグロです。
実際出てきたマグロだけ丼ですが、肉厚で冷凍物では無い、新鮮なマグロで、口に入れるととろけるような食感でした。大トロ、中トロ、赤身が全て味わえますが、赤身でさえ普通の寿司屋のトロ並みの食感です。
ちなみにマグロだけ丼はメニューにも載っていますが、注文を聞かれるその看板では文字でしか載っていなかったので、マグロだけ食べたい!というなら名指しで行っても良いと思います。
帰りも遠い
マグロ丼を食べて満足してしまったというのもありますが、尻屋崎へ向かおうとナビに入力したら、大間からさらに2時間以上かかります。尻屋崎灯台の地域は開場時間が夏場は16:45までで閉まってしまいます。(灯台ではなく、灯台へ向かう道路が閉まる)15時を過ぎたこれから行っても、おそらくしまっているでしょう。止むを得ず尻屋崎を断念しました
大間から津軽まで、また6時間弱の移動です。ちなみに帰りは5時間くらいの移動でした。ほぼ12時間、1日の半分は移動に費やしてしまい、一人旅ではダメージが大きかったです。
もし下北に行かれるなら、むつ市や大間崎の民宿などを利用し、泊まりで楽しまれることをお勧めします。