人力移動Blog

登山、シンプルライフ、旅行などなど…

雪さえなければいいところ

暑い夏だからこそ雪の話題というわけではないですが、冬に雪の話題をすると心まで寒くなってしまうのでちょうどいいかもしれません。

以前読んだ尊敬する民俗学者宮本常一』の本に、旅立つ息子に向けて、父が書いた手紙に『親はいつでもお前を待っている』という一節がありました。これは若者が田舎を出て広い世界で挑戦し、たとえ挫折しても帰ってくる場所がある、だから心配しないでやりたいことをやってきなさい、という現在では失われかけたふるさとの懐の深さを表していると思います。

失われかけたとしたのは、私の実家は北東北の雪深い山村なのですが、いい年になって終の棲家を考えるようになると、故郷が一番とも言えないな、と思うからです。

雪の厳しさ

昨年末ふるさとで一人暮らしする母が病気で倒れたあと、しばらくふるさとに帰り、家の手入れなどをしました。久し振りのふるさとの生活で実感したのは、一人暮らしでの雪の厳しさです。

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一回10万円

私のふるさとは雪深い山村です。毎年何もしなければ家が雪に埋もれるほど積雪し、お年寄りが一人で住む家では、まれに屋根雪で家屋が倒壊するほどです。屋根の雪下ろしは若い男でも重労働です。屋根雪下ろしは業者に頼むと条件によりピンきりですが、2階建ての一戸建てで、雪捨て場までの輸送を含むと10万円くらい掛かります。大雪だとそれが何度も必要になります。貧しい雪国で、更にそれだけ余計なコストがかかるということは、少ない年収から可処分所得もそれだけ圧縮されてしまうということです。

毎日繰り返される肉体労働

道路は市町村の除雪車が面倒を見てくれますが、道路の氷になった雪を家の前に置いて行きます。毎日砕いてどけないと車を出せません。通勤前に早起きして家の周りを雪かきし、勤務先でも会社の雪かきに動員され、帰ってきたら家の雪かきです。週末は屋根雪下ろしが待っています。1月〜2月は毎日雪かきに追われ、仕事が休みでも長期の旅行にも行けませんし、体力のある男の私でもキツいのに、病み上がりの母は今後何年も耐えられるのかと思うと、心配はつきません。

田舎はどこも貧しいですが、雪国は雪の降らない地域に比べて、いっそう貧しいです。雪があるだけでその期間、農業や建設業が経済活動のかなりの割合を止めてしまいます。そのうえ燃料費、除雪など余分なコストが必要なのですから、いいことはありません。実際旅行や仕事で全国まわりましたが、同じような人口、同じような家並みの風景でも、雪が多い地域は全般的にどことなく陰鬱さが有り、経済的にも貧しいのです。

雪が降らないところで暮らしたい

久し振りにふるさとの仲間に会うと、いつも決まって『ふるさとは雪さえなければいいところだった』が合言葉です。それだけ辛かったのでした。 私も老後にふるさとに帰りたいかというと、そのような気持ちは全くありません。少なくとも『雪の降らないところで暮らしたい』です。